社宅の退去と原状回復・敷金精算|複数戸をまとめて解約するとき
借上げ社宅は、借りるときより返すときのほうが手間がかかります。負担の線引き、立会い、鍵の返却、精算書の受領が、戸数の分だけ並ぶからです。国土交通省のガイドラインと民法の考え方を整理しました。
原状回復は「どこまで直すか」ではなく「誰が払うか」
国土交通省のガイドラインは、原状回復を「賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と説明しています。入居前と同じ状態に戻すことではありません。経年変化や通常の使用による損耗等の修繕費用は賃料に含まれる、とも整理されています。なおガイドラインは法令ではなく、国土交通省が示した考え方です。実際の負担は契約書の条項で決まります。
※ 出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」平成23年8月。2026年9月時点。
経過年数の考え方と、「6年」の誤解
同じ傷でも、入居1年目と6年目では借主の負担額が変わります。部位ごとに耐用年数を当てはめて負担割合を考えるためです。
| 部位・設備 | 取扱い |
|---|---|
| 壁(クロス)/畳床・カーペット・クッションフロア | 6年で残存価値1円となる直線(または曲線)を想定して算定 |
| 流し台/冷房用・暖房用機器 | 耐用年数5年のもの/同6年のもの |
| 便器、洗面台等 | 耐用年数15年のもの |
| フローリング/畳表 | 補修は経過年数を考慮しない |
「6年住めばクロスの負担はゼロ」ではありません
本文は、経過年数を超えた設備等であっても修繕等の工事に伴う負担が必要となることがあり得る、としています。年数だけを根拠に負担なしとは言えません。張替えの範囲は、クロスなら㎡単位が望ましいとしつつ、毀損箇所を含む一面分までは借主負担もやむをえない、とされています。
※ 出典:同ガイドライン本文12ページ・別表2・別表3。残存価値1円は、平成19年の税制改正で耐用年数経過時に残存簿価1円まで償却できるようになったことによります。2026年9月時点。
敷金はいつ、どのように戻るのか
法務省の説明では、賃貸借契約が終了して賃借物が返還された時点で敷金返還債務が生じ、その額は受領した敷金から、それまでに生じた金銭債務の額を控除した残額とされています(民法622条の2)。原状回復は、借りた後に生じた損傷は借主が負うが、通常損耗や経年変化は負わない、とされています(民法621条)。
※ 出典:法務省「賃貸借契約に関する民法のルールが変わります」。施行日2020年4月1日。
精算の順番:明渡しの完了 → 返還債務の発生 → 未払分や借主負担分の控除 → 内訳を示して残額の返還。鍵が戻っていない部屋は、明渡し済みと見てもらえないことがあります。
複数戸をまとめて解約するときの段取り
解約の申入れ期間は契約書の定めによります。国土交通省の賃貸住宅標準契約書では、借主は少なくとも30日前の申入れで解約でき、30日分の賃料を支払えば随時に解約できるとされています。また、法人が借主の社宅は消費者契約ではありません。消費者契約法の消費者は、事業として又は事業のために契約の当事者となる場合を除く個人だからです。個人向けの違約金の相談事例は当てはめられません。
※ 出典:賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版)第11条/消費者庁「消費者契約法 逐条解説 第2条」。個々の契約が同じとは限りません。2026年9月時点。
解約日をそろえるか
立会いを1日にまとめたいならそろえる、1戸ずつ見積りを確かめたいならずらす。
立会いの日程を先に
管理会社が同じでも担当者は部屋ごとです。解約通知と同時に希望日を複数お伝えください。
鍵と精算書は戸ごとに
鍵は本数とスペアの有無まで確認。精算書は部屋番号と箇所が分かる形で。
争点になりやすい場所と、入居日にできる備え
日本での一人暮らしが初めての方は、使い方の前提を知らないだけ、ということがよくあります。指摘が多いのは、室内での喫煙(可否は契約書で分かれます)、調理のにおいと油、結露とカビ、壁の穴・ビス穴(取り付けの可否は管理会社へ確認を)、ペット不可物件での飼育のあたりです。
線引きは「通常の使用の範囲か、故意・過失か」で判断されます。鍵を渡した日に、壁・床・水まわり・既存の傷を日付の残る形で撮り、使い方は母語で伝えてください。国土交通省は契約書に添付する原状回復の条件の様式も公開しています。負担区分を契約時に書面にしておけば、退去の話が短く済みます。
在留資格や労務の手続きそのものは、行政書士・社会保険労務士の業務です。当社がお手伝いできるのは住まいに関する範囲です。ご相談とお見積りは無料です。ご請求は仲介手数料のみです。
ご利用の流れ
- 1
お問い合わせ・ヒアリング
勤務地、人数、入居希望日、予算、契約名義(法人か本人か)、必要な設備をお聞きします。フォーム・電話・LINEのどれでも構いません。 - 2
物件のご提案
外国籍入居の可否を確認済みの候補を、間取り・家賃・初期費用の一覧でお送りします。ご担当者様が見つけた物件の持込みも歓迎です。 - 3
審査・契約
保証会社の申込み、契約書類の準備、重要事項説明まで当社で行います。法人契約・社宅規程に合わせた書式にも対応します。 - 4
入居・ライフライン開通
鍵のお渡しに合わせて電気・ガス・水道・ネットを開通。家電・SIMもご希望に応じて同時に手配します。
よくあるご質問(退去と精算について)
6年住めばクロスの負担はゼロになりますか。
そうとは限りません。本文は、経過年数を超えた設備等でも修繕等の負担が必要となることがあり得る、としています。
ガイドラインに反する精算を求められたら、拒めますか。
ガイドラインは法令ではなく、国土交通省が示した考え方です。契約書の条項を確認し、範囲と金額の根拠を確かめます。
敷金はいつ返ってきますか。
法務省の説明では、契約が終了して賃借物が返還された時点で返還債務が生じ、受領した敷金からそれまでの金銭債務の額を控除した残額とされています。
解約の連絡は何日前に入れればよいですか。
契約書の定めによります。賃貸住宅標準契約書では、30日前の申入れ、または30日分の賃料の支払により随時解約できるとされています。
複数の部屋をまとめて解約できますか。
日程はまとめて調整できますが、敷金の返還債務は戸ごとに明渡しの時点で生じます。調整と立会いは当社でお引き受けします。


