「申請したら施設を勧められた。断れるの?」
「無料低額宿泊所って、どういう場所?」
「いま施設にいるけど、アパートに移りたい」
住まいを失った状態で生活保護を申請すると、無料低額宿泊所(略して「無低」と呼ばれます)を案内されることがあります。名前を初めて聞く方も多いと思います。
これは社会福祉法にもとづく事業で、生活に困っている方に低額または無料で住まいを提供する仕組みです。行き場のない状態から生活を立て直す出発点として、実際に多くの方を支えてきました。一方で、施設によって設備や支援の質に大きな差があることも指摘されてきました。この記事では、制度の中身と、入る前に確認したいこと、そしてアパートに移るための手順を整理します。
📋 この記事でわかること
- 無料低額宿泊所とは何か
- 2020年に規制が強化された
- 日常生活支援住居施設という区分
- 施設によって差がある——入る前に確認したいこと
- 入所は断れるのか
- アパートに移るための手順
- よくある疑問Q&A
| 法律上の位置づけ | 社会福祉法第2条第3項に定める第2種社会福祉事業のうち、「生計困難者のために、無料又は低額な料金で、簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他の施設を利用させる事業」として開設された施設です |
|---|---|
| 該当の要件 | 入居対象を生計困難者に限定している、入居者のおおむね5割以上が生活保護受給者で契約が賃貸借契約以外である、または食事等のサービスを提供している。これらのいずれかに該当し、かつ居室の使用料が住宅扶助の基準額以下であることが要件です |
| 位置づけの原則 | 一時的に滞在し、地域での生活へ移行することを目指す施設です。滞在期間の目安を定めている自治体もあります |
| 運営主体 | NPO法人が中心とされています |
かつては、社会福祉法に施設の基準や人員の基準がなく、自治体に届け出るだけで参入できる状態でした。そのため設備や支援の質に大きな幅が生じ、報道で問題が指摘されることもありました。
この状況を受けて、2018年に社会福祉法が改正され、2020年4月1日から規制が強化されています。
| 事前届出制 | 従来の事後の届出から、事業を始める前に都道府県・指定都市・中核市へ届け出る仕組みになりました |
|---|---|
| 最低基準の法定化 | 設備や運営について、法律に根拠のある基準が設けられました。自治体は条例で基準を定めています |
| 改善命令など | 基準を満たさない場合の処分権限が整理されました |
| 日常生活支援住居施設 | 支援が必要な方に対して、より手厚い支援を行う施設を認定する仕組みが創設されました |
2020年の改正で新しく設けられたのが日常生活支援住居施設です。無料低額宿泊所のうち、一定の要件を満たすものが自治体の審査を経て認定されます。
| 対象 | 単独での居住が困難で、日常生活上の支援を必要とする方 |
|---|---|
| 支援の内容 | 生活課題への対応、服薬や金銭管理の支援、通院への同行など、日常生活を支える支援が行われます |
| 認定 | 都道府県・指定都市・中核市が審査のうえ認定します。認定を受けた施設は一覧で公表されています |
| 位置づけ | 一般の無料低額宿泊所より、支援の体制が手厚い区分にあたります |
同じ「無料低額宿泊所」という名前でも、実際の環境は施設によって違います。入る前に、あるいは入った直後に、次の点を確認してください。
| 確認すること | なぜ大切か |
|---|---|
| 居室は個室か、広さはどれくらいか | 相部屋か個室かで、生活の落ち着きがまるで違います。実際に部屋を見せてもらってください |
| トイレ・浴室・洗面の状況 | 共用の場合、数と清潔さを確認します。屋外にしかないといった環境では、生活の負担が大きくなります |
| 費用の内訳 | 居室の使用料、食費、共益費、その他のサービス料。何にいくらかかり、手元にいくら残るのかを書面で確認してください |
| 手元に残る金額 | 生活保護費から施設への支払いを差し引いて、自由に使えるお金がいくらになるか。ここが最も重要です |
| 滞在の期間 | 目安としてどのくらいの期間を想定しているのか。地域生活への移行に向けた計画があるか |
| 外出・来客のルール | 行動が過度に制限されていないか |
| 認定の有無 | 日常生活支援住居施設の認定を受けているか |
⚖️ 基本的な考え方
| 施設への入所は | 生活保護を受けるための条件ではありません。施設に入らなければ保護を受けられない、という制度にはなっていません |
| 居宅保護が原則 | 生活保護は、自分の住まいで生活しながら受けるのが原則とされています |
| それでも案内される理由 | 住まいがない状態では、すぐにアパートを借りるのが難しいためです。当面の居場所を確保する必要があります |
1ケースワーカーに転居の意思を伝える
「アパートで生活したい」と伝えることから始まります。転居には事前の承認が必要なので、この相談を飛ばすことはできません。
2単独での生活が可能かを確認する
健康状態、金銭の管理、通院の状況。単身での生活が成り立つと判断されることが、転居の前提になります。心配な点があれば、どんな支援があれば可能かをあわせて相談してください。
3転居の承認を得て、上限額を確認する
住宅扶助の上限額(名古屋市の単身であれば37,000円)を確認します。敷金などが一時扶助の対象になるかも、この段階で聞いておきます。
4生活保護に対応した不動産会社に相談する
事情を説明する負担が小さく、手続きの順番も把握しています。保証人がいない場合の対応にも慣れています。
5物件をケースワーカーに報告し、承認を得て契約する
家賃と初期費用の見積もりを提出します。承認前に契約すると、敷金や引っ越し費用が支給されないことがあります。
6入居後の生活を整える
家具什器費や被服費が一時扶助の対象になる場合があります。転居の相談の段階で、何が支給されうるかを聞いておいてください。
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📌 まとめ
- 無料低額宿泊所は社会福祉法にもとづく第2種社会福祉事業。居室の使用料は住宅扶助の基準額以下と定められている
- アパートとの違いは賃貸借契約ではないこと。一時的に滞在し、地域での生活へ移行することを目指す位置づけ
- かつては基準がなく質に幅があったが、2020年4月から規制が強化された(事前届出制・最低基準の法定化)
- より手厚い支援を行う日常生活支援住居施設という認定の区分もある
- 入る前に確認すべきは居室・水回り・費用の内訳、そして手元にいくら残るか
- 施設への入所は生活保護の条件ではない。居宅保護が原則
- 「アパートに移りたい」という希望は最初にはっきり伝える
- 保証人がいなくてもアパートは借りられる。諦める理由にはならない




