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2026.07.27

有料職業紹介×住まい支援|求職者に選ばれる不動産連携のかたち

「良い求人を出しても、住むところが決まらないから就業に至らない」——外国籍の求職者を扱う人材紹介会社から、実際によくいただくご相談です。

ところが、有料職業紹介事業者が住まいの面倒まで見ようとすると、職業安定法と宅地建物取引業法という2つの法律の壁に突き当たります。求職者からお金を受け取れない。物件を紹介すると免許の問題が出てくる。

この記事では、その線引きを整理したうえで、人材紹介会社と不動産会社が無理なく組める連携のかたちを、実務の観点からご説明します。

この記事でわかること

  1. なぜ人材紹介会社が住まいまで見る必要があるのか
  2. 派遣会社・受け入れ企業とは立場が違う
  3. 職業安定法の壁|求職者から費用を取れない
  4. 宅建業法の線引き|どこまでが「紹介」でどこからが「媒介」か
  5. 育成就労の転籍には関われない、という注意点
  6. 実際に組める連携のかたち
  7. よくあるご質問
01なぜ人材紹介会社が住まいまで見る必要があるのか

日本人の求職者であれば、住まいは本人が自分で用意するのが当たり前です。ところが外国籍の求職者、とくに来日間もない方の場合、この前提が成り立ちません。

理由は単純で、順番が逆になるからです。就業先が決まらないと入居審査が通りにくい。ところが住所が定まらないと就業手続きが進まない。この循環に入ると、本人にはどうしようもありません。加えて、保証人が立てられない、日本語での契約説明が理解できない、そもそも入居を断られる、という壁が重なります。

結果として何が起きるか。紹介が決まりかけていた案件が、住まいを理由に流れます。求人企業からすれば「紹介してもらったが入社に至らなかった」となり、紹介手数料も発生しません。人材紹介会社にとって住まいの問題は、善意の付帯サービスではなく、成約率に直結する事業課題です。

だからこそ「住まいまで面倒を見てくれる紹介会社」は求職者に選ばれます。ただし、その関わり方には法律上の枠があります。

02派遣会社・受け入れ企業とは立場が違う

ここを混同すると話が噛み合わなくなるので、先に整理します。外国籍スタッフの住まいに関わる事業者は複数いますが、法律上の立場がそれぞれ違います。

立場 雇用主か 住まいへの関わり方
派遣会社 雇用主になる 自社の従業員として、社宅を法人契約で用意できる。寮費を給与から控除する運用も設計しやすい
受け入れ企業(直接雇用) 雇用主になる 同上。育成就労・技能実習では宿泊施設の確保が計画の認定基準に含まれる
監理支援機関・登録支援機関 雇用主ではない 支援業務の一環として住居確保の支援が位置づけられている
有料職業紹介事業者 雇用主にならない 求職者と求人企業を結びつける立場。自社名義で社宅を持つ必然性がなく、費用の受け皿もない

派遣会社であれば、自社で借り上げた社宅にスタッフを住まわせ、その費用を給与控除で回収する設計が組めます。雇用関係があるからです。しかし有料職業紹介事業者は、紹介が成立した時点で当事者から降ります。住まいのコストを負担する理由も、回収する手段も、構造的に持っていません。

この「回収する手段がない」という点が、次に述べる職業安定法の制約と重なって、話を難しくしています。

03職業安定法の壁|求職者から費用を取れない

有料職業紹介事業者は、原則として求職者から手数料を徴収できません(職業安定法32条の3第2項)。芸能家・モデル・科学技術者・経営管理者・熟練技能者など一部の職業について例外が定められていますが、外国籍求職者の多くが対象となる分野では、まず例外に当たらないと考えておくのが安全です。

この規定の趣旨は、経済的に厳しい立場に置かれやすい求職者に過大な負担を負わせないことにあるとされています。つまり求職者を守るための規制であって、抜け道を探す性質のものではありません。

収益源は求人企業から受け取る紹介手数料に限られ、その手数料も、支払われた賃金額に応じた上限が定められている上限制手数料と、あらかじめ厚生労働大臣に届け出た手数料表の範囲で設定する届出制手数料のいずれかによることとされています。

2025年4月から加わったルール
厚生労働省は職業安定法に基づく省令・指針を改正し、2025年(令和7年)4月1日から、職業紹介事業者に対して、徴収した紹介手数料の実績を人材サービス総合サイトに掲載することを求めています。また、求人者に対しては違約金に関する定めについて誤解が生じないようあらかじめ明示することが必要とされました。
なお、募集情報等提供事業者(求人メディア等)については、労働者になろうとする方に金銭やギフト券等を提供することが原則禁止とされています。事業区分によって適用されるルールが異なるため、自社がどの区分に当たるかを踏まえてご確認ください。

ここから導かれる実務上の結論はシンプルです。「住まい探しのサポート料」という名目で求職者から金銭を受け取る設計は取れません。また、求人企業から受け取る紹介手数料に住宅支援分を上乗せする形も、手数料の届出内容との整合を確認せずに行うと問題になり得ます。

では、費用を取らずにどう成立させるのか。答えは「自社で完結させようとしないこと」です。

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04宅建業法の線引き|どこまでが「紹介」でどこからが「媒介」か

もうひとつの壁が宅地建物取引業法です。宅建業の免許を持たない事業者が、賃貸借の媒介にあたる行為を反復継続して行えば無免許事業に該当します。「善意でお部屋を探してあげただけ」でも、態様によっては該当し得ます。

一方で、免許のない事業者が不動産会社に顧客を紹介し、成約時に紹介料を受け取ること自体については、経済産業省のグレーゾーン解消制度を通じて整理が示されています。公益財団法人不動産流通推進センターの解説によれば、この照会により、宅建業免許を持たない者が宅建業者に顧客を紹介して成約時に紹介料を受領することを反復継続して行っても宅建業法に抵触しないことが明確になったとされています。ポイントは、不動産会社そのものを紹介するにとどまるのであれば、媒介行為には当たらないという点です。

実務に落とすと、次のような整理になります。

行為 評価の目安
「住まいのことは、この不動産会社にご相談ください」と会社を案内する 媒介行為には当たらないと整理されている領域
求職者の連絡先を、本人の同意を得て不動産会社へ取り次ぐ 同上。同意の取得と個人情報の扱いは別途要注意
個別の物件情報を選んで求職者に提示する 媒介行為とみなされるおそれがある
家賃や初期費用の条件交渉に関与する 同上。関与の度合いが上がるほどリスクが高まる
賃貸借契約の締結に立ち会い、実質的にとりまとめる 無免許事業に該当するおそれが高い

注意していただきたいのは、これが紹介する側だけの問題ではないことです。宅建業者が無免許事業に代理または媒介として関与した場合、宅建業者の側も監督処分の対象となり得るとされています。つまり、線引きが曖昧な連携は不動産会社にとってもリスクであり、だからこそ真っ当な不動産会社ほど提携の枠組みを明確にしたがります。

提携契約は「曖昧さを残さない」ことが要点です
不動産流通推進センターの解説でも、こうした業務提携を行う場合は、提携契約の内容について曖昧さが残らないよう詳細かつ明確な取り決めが必要である旨が指摘されています。何を紹介し、何をしないのか。紹介料はどの時点で、どの基準で発生するのか。書面で固めておくことが、双方を守ります。
※個別の事案が適法かどうかの判断は、弁護士等の専門家、または免許行政庁・所管窓口へご確認ください。本記事は一般的な整理をお示しするものです。
05育成就労の転籍には関われない、という注意点

2027年4月1日に施行される育成就労制度について、人材紹介会社が必ず押さえておくべき点があります。

出入国在留管理庁の育成就労制度Q&Aによれば、本人の意向による転籍が認められるための要件のひとつとして、転籍にあたって民間の職業紹介事業者による職業紹介等を受けていないことが挙げられています。

つまり、育成就労外国人の本人意向転籍について、有料職業紹介事業者がビジネスとして関与する道は制度上想定されていません。「転籍需要が増えるなら人材紹介の商機になる」という見立ては、この要件を見落としています。

ただし、これは住まいの支援まで否定するものではありません。制度が禁じているのは職業紹介への関与であって、住居の確保そのものではないためです。特定技能や技術・人文知識・国際業務など、通常の職業紹介が可能な在留資格の求職者について、住まいの支援を通じて選ばれる紹介会社になる——こちらが本筋の考え方になります。

なお、育成就労制度は本記事作成時点でまだ施行前であり、告示や運用要領の追加・改正が続いています。制度の解釈や個別の可否については、外国人育成就労機構・所管省庁の窓口や専門家へご確認ください。

06実際に組める連携のかたち

ここまでの制約を踏まえると、人材紹介会社が取り得る形は絞られてきます。当社が実際にパートナー各社と組んでいる枠組みは、おおむね次のような構成です。

項目 設計の考え方
役割分担 紹介会社は「不動産会社を案内する」ところまで。物件選定・条件交渉・契約は不動産会社が行う
費用負担 求職者からサポート料を取らない。紹介会社が費用を立て替える必要もない
紹介料 賃貸の成約時に、不動産会社から紹介会社へ支払う。体系はパートナーごとに個別設計(仲介手数料に対する割合、定額など)
付帯サービス 家電の手配や生活立ち上げの支援も含めて対応。こちらの成約にも紹介料を設定する例がある
契約書 業務提携契約を締結し、対象範囲・発生条件・支払時期を明記する
支払サイクル 月末締め・翌月末払いなど、事務が回る形で固定する

この形であれば、紹介会社は職業安定法上の手数料規制に触れず、宅建業法上の無免許事業のリスクも負いません。求職者は住まいの相談先が明確になり、就業までの時間が短くなります。

当社は名古屋を拠点に、社宅事業として外国籍スタッフの住まい手配を全国で承っています。スペイン語・ポルトガル語での対応が可能で、その他の言語についても紹介会社様と連携して連絡体制を組む形でご相談に応じています。求職者の方が「言葉が通じない不動産会社に一人で行かされる」状況を作らないことが、実務では効きます。

有料職業紹介事業者のご担当者様へ

住まいを理由に紹介が流れてしまうケースを減らすため、提携の枠組みからご一緒に設計します。対象範囲・紹介料・実務フローを書面で固めたうえでのお取り組みです。

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07よくあるご質問
Q. 求職者から「部屋探しサポート料」として実費だけ受け取るのも難しいですか?
A. 有料職業紹介事業者が求職者から手数料を徴収することは職業安定法上原則として禁止されており、名目を変えても実質が職業紹介に付随する費用の徴収と評価されれば同じ問題が生じ得ます。個別の可否は、労働局の需給調整事業部門や専門家へご確認いただくのが確実です。当社との連携では、求職者からの費用徴収を前提としない設計にしています。
Q. 良さそうな物件を見つけたので求職者に教えてあげたい、という程度でも問題になりますか?
A. 一回限りの善意のやり取りと、事業として反復継続する行為とでは評価が変わります。ただ、個別の物件情報を選んで提示する行為は媒介行為とみなされるおそれがある領域です。提携の枠組みを作るのであれば、最初から「会社を案内するところまで」と役割を決めておくほうが、双方にとって安全です。
Q. 紹介料を受け取ると宅建業法違反になりませんか?
A. グレーゾーン解消制度を通じて、宅建業免許を持たない者が宅建業者に顧客を紹介し、成約時に紹介料を受領することを反復継続して行っても宅建業法に抵触しないことが明確にされたと解説されています。ただし紹介の態様が媒介行為に及べば話は変わります。提携契約で範囲を明確にすることが前提です。
Q. 育成就労が始まったら、転籍のマッチングは商機になりますか?
A. 入管庁Q&Aでは、本人意向の転籍の要件として、民間の職業紹介事業者による職業紹介等を受けていないことが挙げられています。転籍そのものを人材紹介ビジネスとして扱うことは制度上想定されていないとお考えください。住まいの支援は別の話であり、そちらでの連携は可能です。
Q. 対応エリアはどこまでですか?
A. 社宅事業は全国対応です。名古屋市西区に拠点があり、愛知・岐阜を中心としつつ、他エリアの案件も承っています。まずはご相談ください。

この記事のまとめ

外国籍の求職者は、住まいが決まらないと就業に至らない構造があります。住まいの問題は付帯サービスではなく、紹介の成約率に直結する事業課題です。

一方で有料職業紹介事業者は、雇用主にならないため費用の受け皿がなく、職業安定法上、求職者から手数料を徴収することも原則としてできません。

宅建業法の面では、不動産会社そのものを案内するにとどまるのであれば媒介行為には当たらないと整理されており、成約時の紹介料の受領についても整理が示されています。ただし個別物件の提示や条件交渉に踏み込むと評価が変わります。

育成就労の本人意向転籍については、民間の職業紹介事業者による職業紹介等を受けていないことが要件とされています。転籍そのものへの関与ではなく、住まいの支援で選ばれる紹介会社を目指すのが本筋です。

本記事は一般的な整理であり、個別事案の適法性は専門家・所管窓口へご確認ください。

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