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2026.06.17

外国人スタッフの宿舎費を給与から天引きする方法——適法な運用ルールと金額設定の実務

「社宅費用をスタッフの給与から天引きしたいが適法にやるには何が必要?

「いくらまで天引きできる?最低賃金を下回らないか心配

「スタッフに同意を取らずに天引きしていた。問題になる?

外国人スタッフに社宅を提供する際、その費用(宿舎費)を給与から天引きしている企業は多くあります。しかし天引きには労働基準法・最低賃金法上の要件があり、適法に運用しないと未払い賃金の問題や労働基準監督署からの指摘につながることがあります。

この記事では宿舎費の給与天引きを適法に行うための要件・金額設定の考え方・よくある違反事例を整理します。

📋 この記事の内容

  1. 給与天引きに必要な2つの要件
  2. 天引きできる金額の上限——最低賃金との関係
  3. 相場に見合った金額設定——税務上の「賃貸料相当額」
  4. 就業規則・社宅規程への明記
  5. 特定技能・技能実習スタッフへの注意点
  6. よくある疑問Q&A
01給与天引きに必要な2つの要件

労働基準法第24条は「賃金は全額を労働者に支払わなければならない(全額払いの原則)」と定めています。社宅費を給与から天引きするには、この原則の例外として認められる要件を満たす必要があります。

要件 内容
①労使協定の締結 会社と労働者の過半数代表(労働組合または過半数代表者)との間で「賃金控除に関する協定」を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出る
②個々の労働者の同意 スタッフ一人ひとりから「社宅費として○円を給与から控除することに同意します」という書面の同意を取得する
⚠️ 労使協定なし・個人の同意なしの天引きは労働基準法違反です。「口頭で了解を取った」「入社時に説明した」だけでは不十分です。書面による同意が必要です。外国人スタッフが日本語を十分に理解していない場合は、母語での説明・同意書が必要です。
02天引きできる金額の上限——最低賃金との関係

社宅費を天引きした後の手取り額が最低賃金を下回ってはなりません。これが天引き金額の実質的な上限になります。

愛知県の最低賃金(2024年度)は時間額1,027円です。月160時間勤務の場合、月額164,320円が最低賃金の目安になります。社宅費を天引きした後の手取りがこの金額を下回らないよう設定する必要があります。

💡 計算例:月給200,000円のスタッフに社宅費30,000円を天引きする場合
手取り:200,000円 - 30,000円 = 170,000円
愛知県最低賃金(月160時間):164,320円
170,000円 > 164,320円 → 適法

残業が多い月は手取りが増えるため問題になりにくいですが、欠勤・早退で給与が減った月に最低賃金を下回らないか毎月確認することが重要です。

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03相場に見合った金額設定——税務上の「賃貸料相当額」

社宅費の天引き額が「賃貸料相当額」以上であれば、給与課税が生じません。賃貸料相当額とは税法上の計算式で算出される金額で、簡単にいえば「適正な家賃相当額」です。

賃貸料相当額の計算式は固定資産税評価額をベースにした複雑なものですが、目安として実際の家賃の50%程度を徴収していれば給与課税なしとされることが多いです。ただし正確な計算は税理士への確認をおすすめします。

天引き額 給与課税の有無
賃貸料相当額以上を徴収 給与課税なし(経費として損金算入可)
賃貸料相当額未満を徴収 差額が給与として課税される
無料で提供(0円) 賃貸料相当額全額が給与課税の対象
04就業規則・社宅規程への明記

社宅費の天引きを適法に運用するには、就業規則または社宅規程に以下の内容を明記することが必要です。

明記すべき内容として、社宅の提供条件(対象者・入居資格)、宿舎費の金額または算出方法、天引きの時期(毎月○日の給与から控除)、退去時の手続き、社宅利用規則(生活ルール・禁止事項)があります。

外国人スタッフが多い場合は、就業規則・社宅規程の母語訳(ベトナム語・インドネシア語・英語等)を用意することで、「知らなかった」というトラブルを防ぎます。不動産のイブキでは入居時の生活ルール書類の多言語版作成サポートも行っています。

05特定技能・技能実習スタッフへの注意点

特定技能・技能実習のスタッフへの宿舎費天引きには、追加の注意点があります。

特定技能の支援計画では「不当に高い家賃を徴収しない」ことが求められています。近隣相場と著しく乖離した高額な宿舎費の徴収は問題になります。技能実習では外国人技能実習機構(OTIT)への報告・巡回指導の際に宿舎費の適正性が確認されます。

実習生から徴収できる宿舎費の目安として、実費(実際の家賃・光熱費)を超えない金額が適正とされています。「宿舎費で利益を上げる」という発想は制度の趣旨に反します。

06よくある疑問Q&A
Q. 入社時に口頭で「社宅費は天引きする」と説明した。書面の同意は必要?
必要です。口頭での説明・了解は書面の同意の代わりになりません。労働基準法上、賃金控除には書面による個別同意が必要とされています。すでに天引きしている場合は速やかに書面の同意を取り直してください。
Q. 日本語がわからない外国人スタッフに同意書にサインさせた。有効?
内容を理解した上でのサインでなければ、有効な同意とはいえません。母語での説明・母語の同意書を用意し、スタッフが内容を理解した上でサインを取ることが必要です。不動産のイブキでは同意書の多言語化サポートも対応しています。
Q. 天引きしていた社宅費が最低賃金を下回っていたことが発覚した。どうすればいい?
不足分を遡及して支払う必要があります。まず顧問の社会保険労務士または弁護士へ相談し、対応方針を決めてください。発覚前に自主的に是正した場合は労働基準監督署への報告を含めた対応が重要です。同じ問題が再発しないよう、給与計算時に最低賃金のチェックを組み込む仕組みを整備してください。

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📌 まとめ

社宅費の給与天引きには「労使協定の締結」と「スタッフ個人の書面同意」の2つが必須です。天引き後の手取りが最低賃金(愛知県1,027円/時)を下回らないことが実質的な上限です。税務上は賃貸料相当額以上を徴収すれば給与課税が生じません。就業規則・社宅規程への明記と外国人スタッフへの母語での説明が適法運用の基本です。特定技能・技能実習では相場を大幅に超える宿舎費の徴収は問題になります。

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