「家具家電付きの物件なら、生活保護でもすぐに生活を始められるのでは」——ご相談でよくいただくお考えです。
結論からお伝えすると、家具家電付き物件を選ぶこと自体に問題はありません。ただし、住宅扶助の上限との関係で注意すべき点があります。「家電の使用料が家賃に含まれている」タイプの物件は、思わぬところでつまずくことがあるのです。
この記事では、家具や家電を揃えるための「家具什器費」という制度を整理したうえで、家具家電付き物件を選ぶ場合の注意点と、どちらが向いているかの考え方をご説明します。
この記事でわかること
- 結論|アリですが、条件があります
- 家具什器費とはどんな制度か
- 家具什器費が支給されるのはどんなとき
- 対象になる物・なりにくい物
- 家具家電付き物件の落とし穴|住宅扶助との関係
- どちらが向いているか|ケース別の考え方
- よくあるご質問
生活保護を受けながら家具家電付きの物件に住むこと自体は、禁止されていません。実際にそうしている方もいらっしゃいます。
ただし、確認しておくべき点が2つあります。
住宅扶助で見るのは、家賃(間代)の金額です。家具家電の使用料が家賃に上乗せされて表示されていると、上限を超えてしまうことがあります。
② 家電使用料が別建ての場合、その分を毎月の生活費から払えるか
家賃とは別に「家電レンタル料」として請求される場合、その費用は住宅扶助ではなく生活費のやり繰りから支払うことになります。
この2点を確認せずに契約を進めると、あとから「家賃が上限を超えていて認められない」「毎月の生活費が足りない」という事態になりかねません。順を追って見ていきます。
まず、家具家電付き物件を検討する前に知っておいていただきたいのが「家具什器費(かぐじゅうきひ)」です。
これは毎月の保護費とは別に支給される「一時扶助」のひとつで、生活に必要な家具や家電を持っていない場合に、その購入費用が支給される仕組みです。
ただし、誰でもいつでも受けられるものではありません。厚生労働省の考え方では、日常生活に必要な生活用品は毎月の保護費のやり繰りによって計画的に購入するのが原則とされており、特別な事情がある場合に限って一時扶助としての支給が認められています。
厚生労働省が示している支給を認める場合には、次のようなものがあります。
| 場面 | 内容 |
|---|---|
| 保護開始時 | 保護が始まる時点で、最低生活に直接必要な家具什器を持ち合わせていないとき |
| 退院・退所して単身生活を始めるとき | 単身の世帯で、長期の入院・入所のあとに退院・退所し、新たに単身で住み始める場合に持ち合わせがないとき |
| 災害にあったとき | 災害で失い、災害救助法による救助が行われない場合など |
| 転居して設備が合わないとき | 新旧の住居の設備が違うために、今持っている家具什器が使えず、補わなければならない事情が認められるとき |
| 犯罪被害で転居するとき | 犯罪等の被害を受け、生命身体の安全を確保するために新たに転居する場合で持ち合わせがないとき |
ここで注目していただきたいのが4番目の「転居して設備が合わないとき」です。前の部屋に備え付けだった設備が新しい部屋にはない、といったケースが該当し得ます。転居を検討されている方は、この点も含めてケースワーカーにご相談ください。
また、熱中症による健康被害を踏まえ、平成30年7月1日から冷房器具も家具什器費の対象に加えられています。冷暖房器具の扱いについては別の記事で詳しくご説明していますので、あわせてご覧ください。
家具什器費の対象は「最低生活に直接必要な」家具什器とされています。言い換えれば、生活を成り立たせるために欠かせないかどうかが基準です。
| 例 | |
|---|---|
| 対象になりやすい物 | 炊事用具(鍋、包丁など)、食器、寝具、冷房器具など、生活の基本に関わるもの |
| 対象になりにくい物 | 快適さや好みのために求めるもの。より上位の品を希望する場合の差額分 |
注意していただきたいのは、どの品目がどこまで認められるかには、福祉事務所の判断が入るという点です。自治体によって運用が異なることもあります。
支給額にも上限があります。上限額は年度や地域によって異なるため、この記事では具体的な金額を示すことは控えます。ご自身の場合にいくらまで認められるかは、必ず担当のケースワーカーにご確認ください。
家具什器費は、申請して支給が決まってから購入するのが基本の流れです。申請書に必要な品目のリストや見積書を添えて提出し、担当者と相談しながら進めます。「あとで請求できるだろう」と考えて先に購入すると、対象外とされて自己負担になる場合があります。購入前にご相談ください。
ここが本題です。家具家電付き物件には、大きく2つのタイプがあります。
| タイプ | 費用の見え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 家賃に家電の使用料が含まれているタイプ | 「家賃55,000円(家具家電込み)」のような表示 | 家賃そのものが高くなるため、住宅扶助の上限を超えやすい |
| 家賃と使用料が別建てのタイプ | 「家賃35,000円+家電使用料5,000円」のような表示 | 家賃部分は上限内に収まるが、使用料は毎月の生活費から支払うことになる |
住宅扶助で判定されるのは、家賃そのものの金額です。家具家電の使用料を含めた総額ではありません。したがって、家電代が家賃に組み込まれているタイプの物件は、その分だけ家賃が押し上げられ、上限を超えてしまう可能性が高くなります。
参考までに、住宅扶助の上限額は次のとおりです。
| 地域 | 単身 | 2人以上の世帯 |
|---|---|---|
| 名古屋市内 | 37,000円 | 44,000円 |
| 名古屋市外 | 36,000円 | 43,000円 |
この金額を見ていただくと分かるとおり、家電代を上乗せする余地はほとんどありません。家具家電付きを謳う物件の多くは、この上限を超える家賃設定になっています。
別建てのタイプであれば、家賃部分が上限内かどうかで判断されます。ただし使用料は自己負担になりますので、毎月の生活費からその分を払い続けられるかを先に考える必要があります。数年住むのであれば、支払総額は決して小さくありません。
物件の可否は最終的に福祉事務所が判断します。家具家電付き物件は費用の内訳が複雑になりがちですので、申し込みの前に、家賃と使用料の内訳が分かる資料を持って相談するのが確実です。契約してから認められないと分かると、手付金などで損をすることになります。
| 状況 | 向いている選択 | 理由 |
|---|---|---|
| 保護開始時で、家財を何も持っていない | 家具什器費を申請し、通常の物件を探す | 支給が認められれば初期費用を抑えられ、家賃も上限内に収まりやすい |
| 家具什器費の対象にならないと言われた | 家賃と使用料が別建ての物件を検討 | 初期費用をかけずに生活を始められる。ただし月々の負担は増える |
| 長く同じ部屋に住む見込みがある | 通常の物件+自分で揃える | 使用料を払い続けるより総額が安くなりやすい |
| 体調などの事情で家電の搬入・設置が難しい | 家具家電付きも選択肢 | 設置の負担がない。ただし家賃の内訳を必ず確認する |
迷われた場合は、まず家具什器費が使えるかどうかをケースワーカーに確認するところから始めてください。使えるのであれば、通常の物件を探したほうが選択肢が広く、家賃も上限内に収めやすくなります。
不動産のイブキは名古屋市西区に拠点を置き、生活保護を受けながらのお部屋探しを日常的にお手伝いしています。住宅扶助の上限内で、生活保護に対応した保証会社を使える物件をご提案できます。家具家電をどう揃えるかも含めて、ご事情をうかがったうえでご相談に応じます。
この記事のまとめ
生活保護を受けながら家具家電付き物件に住むこと自体は問題ありません。ただし住宅扶助で判定されるのは家賃そのものの金額です。家電使用料が家賃に含まれているタイプは、上限を超えやすくなります。
住宅扶助の上限は、名古屋市内で単身37,000円・2人以上44,000円、名古屋市外で単身36,000円・2人以上43,000円です。家電代を上乗せする余地はほとんどありません。
家具や家電を揃える制度としては「家具什器費」という一時扶助があります。ただし原則は毎月の保護費でのやり繰りで、保護開始時や退院後、転居で設備が合わない場合など、特別な事情がある場合に限られます。
対象は最低生活に直接必要なものに限られ、上限額もあります。申請して支給が決まる前に購入すると自己負担になることがありますので、必ず先にご相談ください。
物件の可否も家具什器費の可否も、最終的に判断するのは福祉事務所です。契約や購入の前に、担当のケースワーカーへご相談ください。
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