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2026.08.10

留学生が退去するとき|原状回復・残置物・帰国後に連絡がつかない場合

卒業式の翌週、部屋に荷物が残ったまま学生が帰国していた。日本語学校では珍しくない事態です。

このとき、学校や大家が荷物を勝手に処分することはできません。国土交通省も、賃借人の動産を無断で運び出して処分すれば自力救済禁止の法理に抵触し、不法行為責任が生じると明確に注意を促しています。

この記事では、退去時の原状回復と残置物の扱い、そして連絡がつかない場合の進め方を整理します。予防策のほうが圧倒的に安く済みます。

この記事でわかること

  1. 残置物は勝手に処分できません
  2. なぜ処分できないのか
  3. 連絡がつかない場合の手順
  4. 原状回復はどこまで負担するか
  5. 入居前にできる予防策
  6. 退去前にできること
  7. 学校名義の場合の責任
  8. よくあるご質問
01残置物は勝手に処分できません

まず、これが大前提です。

国土交通省の解説では、賃貸借が終了し、賃借人による任意の明渡しが完了しない間に、物件内の動産類を運び出して処分等をした場合には、自力救済禁止の法理に抵触し、賃借人に対する不法行為責任が生じるとされています。
したがって、賃借人と連絡を取り、引き取りを要請するか、処分について同意を得ることが基本となります。

「もう帰国したのだから、残っているのはゴミだろう」という判断で処分すると、損害賠償を請求される可能性があります。

とくに注意が必要なのは、明らかに無価値とは言えない物です。家具、家電、衣類などは、後から「後日取りに来るつもりだった」と言われれば反論が難しくなります。

02なぜ処分できないのか

理由は2つあります。

理由内容
所有権が元入居者にある部屋を出ても、荷物の所有権は移りません。所有権を放棄する意思表示がない限り、他人の物です
自力救済が禁止されている権利があっても、法的手続きによらず自分で実力行使することは認められていません
「連帯保証人に処分してもらう」もできません
連帯保証人であっても他人である以上、建物の明渡しや残置物の処分を求めることはできないとされています。
ただし、本人に連絡を取って処分の意向を確認してもらうことは可能ですし、撤去費用を請求できる場合があります。
03連絡がつかない場合の手順

正規の手順は次のとおりです。時間も費用もかかります。

順番やること
1本人への連絡を試みる。連絡した記録を残す(日時、方法、内容)
2緊急連絡先、母国の家族へ連絡する
3連絡がついたら、所有権放棄書や残置物処分同意書に署名をもらう
4それでも連絡がつかない場合、賃貸借契約を解除する
5建物明渡請求訴訟を提起する
6勝訴判決を得て、強制執行を申し立てる

5番と6番まで進むと、数か月と弁護士費用がかかります。その間、部屋は使えません。学校名義の契約であれば、家賃を払い続けることになります。

だからこそ、1番から3番の段階で解決することが決定的に重要です。とくに1番の記録は、後の手続きすべての土台になります。

04原状回復はどこまで負担するか

残置物とは別に、原状回復の問題があります。

国土交通省のガイドラインでは、原状回復を「借主が不注意や通常とはいえない使い方によって生じさせた傷や汚れを元に戻すこと」と定義しています。入居時の状態に戻すことではありません。

貸主の負担日焼けによる壁紙の変色、家具を置いていた床のへこみ、画鋲の穴、設備の自然な劣化
借主の負担タバコのヤニや臭い、落書き、掃除を怠って生じたカビや水あか、水をこぼして放置したことによる腐食

また、クロスなどの耐用年数は6年とされ、長く住むほど負担は減ります。4年住んだ場合、残存価値はおよそ3分の1程度という計算になります。

「新品に戻す費用の全額」を請求されたら
入居年数を確認してください。ガイドラインの考え方に沿っていない可能性があります。
学校名義の契約であれば、この交渉も学校が行うことになります。見積書の内訳を必ず出してもらってください。
05入居前にできる予防策

ここが本題です。トラブルが起きてからでは、選べる手段が限られます。

予防策効果
残置物の扱いを契約時に定める国土交通省が「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を公表しています。参考にできます
所有権放棄の覚書を交わす退去時に残した動産の所有権を放棄する旨を、あらかじめ書面にしておく方法があります
母国の家族の連絡先を必ず取得する本人と連絡がつかないときの唯一の手がかりになります
入居時の写真を撮る原状回復の交渉材料になります
家具家電はレンタルにする学校の所有物であれば、そもそも残置物になりません
連絡先の変更を届け出させる在籍中に電話番号が変わることは珍しくありません

5番目が実は効きます。学生が自分で買った家電は残置物になりますが、学校が用意した備品であれば、そのまま次の学生が使えます。処分の問題自体が生じません。

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06退去前にできること

卒業や帰国の予定が分かった時点で動けば、多くは防げます。

退去日と荷物の処分計画を確認する/「何を持ち帰り、何を捨てるか」を早めに聞いてください
粗大ごみの申し込み方法を教える/事前申込と手数料が必要です。知らずに放置されることがあります
家電リサイクル法の対象品目を伝える/エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機は通常のゴミでは出せません
退去の立ち会い日を決める/本人が帰国する前に済ませてください
敷金の返金先を確認する/帰国後では受け取れません
ライフラインの解約を確認する/電気・ガス・水道・インターネット

敷金の返金先は忘れられがちです。帰国後に日本の口座が使えなくなると、返金できません。退去前に確認してください。

07学校名義の場合の責任

学校が契約者である場合、次の責任を負います。

項目誰が負うか
原状回復費の支払い学校(学生への請求は別の問題)
残置物の処理学校(ただし勝手には処分できません)
明渡しまでの家賃学校
ライフラインの解約名義によります

学生から回収できるかどうかは、オーナーとの関係では関係ありません。学校が契約者である以上、支払い義務は学校にあります。

対策としては、卒業時の精算を想定して、入学時に一定額を預かる方法があります。税務上の取扱いについては、顧問の税理士にご確認ください。

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08よくあるご質問
Q. 明らかにゴミに見える物でも処分できませんか?
A. 一見して無価値であることが明白な物であれば、判断の余地があるとする解説もあります。ただし家具や家電となると、無価値と断定するのは困難です。個別の判断は弁護士等の専門家にご確認ください。
Q. 契約書に「残置物は処分してよい」と書いてあれば大丈夫ですか?
A. 特約があっても、退去が完了していない段階での処分は自力救済にあたり得ます。所有権放棄の同意は、退去という事実と組み合わさって効力を持つとされています。契約条項の作り方については、国土交通省のモデル契約条項が参考になります。
Q. 帰国前に連絡が取れなくなりました。
A. まず緊急連絡先と母国の家族に連絡してください。連絡を試みた記録を必ず残してください。それでもつかない場合は、法的手続きが必要になりますので、弁護士等にご相談ください。
Q. 家電は学校で用意したほうがよいですか?
A. 残置物の問題を避けるという意味では有効です。学校の備品であれば処分の問題が生じず、次の学生がそのまま使えます。中古品であれば費用も抑えられます。
Q. 原状回復費が高額に感じます。
A. 見積書の内訳を出してもらい、通常損耗が含まれていないか、入居年数が考慮されているかを確認してください。クロスなどの耐用年数は6年とされ、長く住むほど負担は減ります。

この記事のまとめ

残置物を勝手に処分することはできません。国土交通省は、無断で運び出して処分すれば自力救済禁止の法理に抵触し、不法行為責任が生じるとしています。

荷物の所有権は元入居者にあります。連帯保証人に処分を求めることもできません。本人に連絡を取り、引き取りか処分の同意を得るのが基本です。

連絡がつかない場合、契約解除、明渡請求訴訟、強制執行という手順になります。数か月と費用がかかり、その間の家賃も発生します。

だからこそ予防策が重要です。残置物の扱いを契約時に定める、母国の家族の連絡先を必ず取得する、家具家電を学校の備品にする(そもそも残置物になりません)。

退去前には、荷物の処分計画、粗大ごみの申込方法、家電リサイクル法の対象品目、敷金の返金先を確認してください。帰国後では受け取れません。

個別の法的判断は、弁護士等の専門家にご確認ください。

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