「住まいは学生が自分で探すもの」なのか、「学校が用意すべきもの」なのか。この線引きが曖昧なまま運営している学校は少なくありません。
結論から申し上げると、どちらか一方に振り切ることは現実的ではありません。完全に本人任せにすれば結局は事務局に相談が戻ってきますし、すべてを学校が抱えれば負担が際限なく膨らみます。
この記事では、制度上求められている体制を確認したうえで、どこまでを学校が担い、どこから外部に委ねるかの考え方を整理します。
この記事でわかること
- 制度上、何が求められているか
- 住居支援は「体制」の一部です
- 学校が抱えると何が起きるか
- 切り分けの基準|4つの層
- 外部に委ねやすい業務
- 学校が担うべき業務
- 委託先を選ぶときの確認点
- よくあるご質問
まず前提を整理します。日本語教育機関を取り巻く制度は、いま移行期にあります。
現行の法務省告示によって定められた日本語教育機関は、2029年(令和11年)3月31日までに、文部科学大臣による認定を受ける必要があります。
この認定基準の中に、留学のための課程を置く機関について、次のような項目が含まれています。
| 認定基準に含まれる項目 |
|---|
| 生活指導担当者の配置や、自治体との連携体制を整備すること |
| 生徒が我が国に適正に在留するための支援体制を整備すること |
| 年1回以上健康診断を行う体制を整備すること |
| 生徒の母語・使用言語を用いた指導や、継続が難しい学習者への支援体制を整えること |
住居そのものを提供せよ、という規定ではありません。ただし「生活指導担当者の配置」「適正な在留のための支援体制」という枠組みの中に、住まいの問題は当然に入ってきます。
ここが認識のずれやすい部分です。
制度が求めているのは、寮を持つことでも、物件を用意することでもなく、体制を整えることです。言い換えれば、住まいで困った学生が相談でき、対応につながる仕組みがあるかどうかが問われています。
| 体制がある状態 | 体制がない状態 | |
|---|---|---|
| 住まいが決まらない学生 | 相談窓口があり、連携先につなげる | 本人が一人で不動産会社を回る |
| 近隣トラブル | 担当者が把握し、対応する | 管理会社から学校に苦情が来て初めて知る |
| 退去・帰国 | 手順が決まっている | その都度、個別に対応する |
体制は、必ずしも自校の人員だけで作る必要はありません。外部の事業者と連携する形でも、体制として機能します。ここが切り分けの出発点です。
住居まわりを学校が全部やろうとすると、次のような負担が発生します。
・オーナーとの交渉/外国籍の入居に消極的な物件も多く、説明と交渉に時間がかかります
・契約手続き/戸数分の書類作成、保証会社とのやり取り
・家具家電とライフライン/購入、配送日の調整、設置立ち会い、ガスの開栓予約
・入居後のトラブル対応/設備の故障、近隣からの苦情、家賃の遅れ
・退去対応/原状回復の立ち会い、残置物の処分、精算
これらは教育業務ではありません。それでも、担当者の時間は確実に奪われます。とくに入学期が重なる時期は、教務の負担と重なって業務が集中します。
加えて、学校が契約者になれば家賃の支払い責任と原状回復の責任を負います。空室が出れば、その分の家賃も学校の負担です。
住居支援を4つの層に分けると、判断しやすくなります。
| 層 | 内容 | 誰が担うか |
|---|---|---|
| 第1層:情報提供 | 住まい探しの方法、相場、注意点を伝える | 学校(生活指導の一環) |
| 第2層:紹介・取次 | 不動産会社を紹介する、連絡をつなぐ | 学校 |
| 第3層:物件の確保と契約 | 物件を探す、審査を通す、契約する | 外部に委ねやすい |
| 第4層:入居後の管理 | トラブル対応、退去手続き | 分担が現実的 |
第1層と第2層は、学校が担うべき部分です。制度上求められている「生活指導」「支援体制」の中核にあたりますし、学生との日常的な接点があるのは学校です。
第3層は、専門性と時間がかかる割に、教育とは無関係です。ここを外部に委ねることで、負担が大きく減ります。
| 業務 | 委ねる利点 |
|---|---|
| 物件の確保 | 受け入れ実績のある物件を持っている事業者なら、探す時間が不要です |
| オーナーとの交渉 | 外国籍の入居について説明できる相手のほうが、話が進みます |
| 保証会社の選定と審査 | 入国前審査に対応する会社を知っているかどうかで、スケジュールが変わります |
| 契約手続き | 宅建業者の本来業務です |
| 家具家電の手配・設置 | 複数戸分の調達と配送調整は手間がかかります |
| ライフラインの取次 | ガスの開栓は立ち会いが必要で、戸数分の日程調整が発生します |
とくに家具家電とライフラインは、委ねる効果が分かりやすい部分です。教育機関の職員が家電量販店と配送日を調整する作業に、専門性はありません。
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逆に、外部に丸投げすべきでない部分もあります。
・生活ルールの指導/ゴミ出し、騒音、近隣づきあい。教育の延長線上にあります
・相談の入口/学生が最初に相談するのは学校です。窓口は残しておいてください
・費用負担の方針決定/誰が何を負担するか。学校の経営判断です
・問題が起きたときの判断/退学、除籍に関わる事案は学校が判断します
とくに1番目は重要です。住居を外部に委ねても、学生がどこに住んでいるかを学校が把握していない状態は避けてください。在籍管理や緊急時の連絡に支障が出ます。
委託先とは、入居者の情報を学校と共有する取り決めをしておくことをおすすめします。
| 確認すること | なぜ |
|---|---|
| 外国籍の入居実績があるか | 実績がなければ、毎回オーナーの説得から始まります |
| 入国前審査に対応する保証会社を扱えるか | スケジュールに直結します |
| 複数戸を同時に手配できるか | 入学期には戸数がまとまります |
| 家具家電・ライフラインまで対応できるか | 窓口が分かれると、結局学校が調整役になります |
| 入居後の連絡に対応できるか | トラブルのたびに学校が通訳するのでは、負担が減りません |
| 多言語対応の有無 | 学生本人とのやり取りが発生します |
| 入居者情報を学校と共有できるか | 在籍管理のために必要です |
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この記事のまとめ
2024年4月に日本語教育機関認定法が施行され、現行の告示校は2029年3月31日までに文部科学大臣の認定を受ける必要があります。
認定基準には、生活指導担当者の配置、自治体との連携体制、生徒が適正に在留するための支援体制の整備が含まれます。住居そのものの提供義務ではありませんが、住まいの問題はこの枠組みに含まれます。
制度が求めているのは体制であり、自校の人員だけで作る必要はありません。外部の事業者と連携する形でも機能します。
住居支援は4つの層に分けられます。情報提供と紹介は学校が、物件の確保と契約は外部に委ねやすく、入居後の管理は分担が現実的です。
ただし、学生がどこに住んでいるかの把握、生活ルールの指導、相談の入口は学校に残してください。委託先とは入居者情報を共有する取り決めをしておくことをおすすめします。
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