近隣からの苦情は、たいてい「知らなかった」から始まります。悪意があって夜中に洗濯機を回す学生はいません。日本の集合住宅の音の伝わり方を知らないだけです。
だからこそ、入居前の説明でかなりの部分を防げます。そして説明用の資料は、自作する必要がありません。公的機関が無料で公開しているものを使えば十分です。
この記事では、学校が入居時に何を説明すべきか、どの資料を使えるか、どう記録を残すかを整理します。
この記事でわかること
- 苦情の大半は事前に防げます
- 説明すべき7つの項目
- 無料で使える多言語資料
- いつ説明するか
- 伝わる説明のしかた
- 記録を残してください
- 苦情が来たときの対応
- よくあるご質問
実際に寄せられる苦情は、内容がほぼ決まっています。
| 苦情の内容 | 背景 |
|---|---|
| 夜間の物音 | 多くの国では住宅の防音性能が日本より高く、音の伝わり方に対する感覚が違います |
| ゴミの分別・出し方 | 日本の分別ルールは細かく、地域ごとに違います |
| 友人の出入りが多い | 母国では当たり前でも、日本の集合住宅では目立ちます |
| 共用部に物を置く | 廊下や階段の使い方の認識が違います |
| 料理のにおい | 換気扇を使う習慣がないことがあります |
いずれも、知っていれば避けられることばかりです。入居後に注意するより、入居前に伝えるほうが、学生にとっても学校にとっても負担が小さくなります。
あれもこれもと詰め込むと伝わりません。優先順位をつけると次の7つです。
| 項目 | 要点 | |
|---|---|---|
| 1 | ゴミの分別と出し方 | 種類、曜日、時間、指定袋。前夜に出さないことを必ず伝えてください |
| 2 | 夜間の静かにする時間 | 夜10時〜朝7時が目安。洗濯機、掃除機、話し声、足音 |
| 3 | 共用部の使い方 | 廊下や階段に物を置かない。避難の妨げになります |
| 4 | 友人の宿泊と人数 | 契約に書かれた人数を超えて住めません |
| 5 | 換気扇を使うこと | 料理のにおいは換気で大半が防げます |
| 6 | 困ったときの連絡先 | 学校、管理会社、110番・119番。紙で渡してください |
| 7 | 住所変更の届出 | 引っ越しから14日以内。在留カードを持参します |
1番と2番だけでも、苦情の大半は減ります。時間が取れない場合は、この2つを優先してください。
やってはいけないことばかり並べると、学生は萎縮するか、聞き流します。なぜそうするのかを一言添えるだけで、伝わり方が変わります。
「夜は静かに」ではなく「日本のアパートは壁が薄く、隣の部屋に音が聞こえます」。理由が分かれば、応用が効きます。
資料をゼロから作る必要はありません。公的機関が無料で公開しているものがあります。
| 資料 | 内容 | 提供元 |
|---|---|---|
| 多言語生活情報 | 住まい、教育、医療、緊急・災害時など17項目を14言語で解説。14言語で在留外国人の94%以上をカバーするとされています | 自治体国際化協会(CLAIR) |
| Japan Life Guide | 上記の内容を収めた無料のスマートフォンアプリ(iOS/Android) | 同上 |
| 多文化共生ツールライブラリー | 各自治体が作成した生活ガイドブック、多言語版のゴミ分別資料などを検索できます | 同上 |
| 自治体の多言語ゴミ分別資料 | 地域ごとのルールが載っています。区役所や市役所で入手できます | 各自治体 |
| 外国人生活支援ポータルサイト | 生活に必要な情報をまとめたポータル | 法務省 |
対応言語には、英語、中国語、韓国・朝鮮語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、インドネシア語、タイ語、タガログ語、ネパール語などが含まれます。日本語(ふりがな付き)とやさしい日本語もあります。
分別ルールは自治体ごとに違います。全国共通の資料では足りません。物件のある区・市の資料を入手してください。多言語版を用意している自治体が増えています。
名古屋市の場合、収集の時間は朝8時までですが、中区だけは朝7時までです。こうした地域差は、地元の資料でないと拾えません。
| タイミング | 内容 |
|---|---|
| 入居前(来日前でも可) | 資料を送っておく。読んでおいてもらう |
| 入居当日または直後 | いちばん効きます。実際の部屋とゴミ置き場を見ながら説明できます |
| 入学後のオリエンテーション | あらためて全体に伝える |
| 1か月後 | 困っていることがないか確認する |
入居当日の説明が最も定着します。ゴミ置き場の場所、収集の曜日、指定袋の色。実物を見ながら聞けば、記憶に残ります。
複数名が同時に入居する時期は、まとめて説明する形でも構いません。ただしゴミ置き場だけは物件ごとに違いますので、現地で確認させてください。
・やさしい日本語を使う/「分別」より「分けて」、「投棄」より「捨てる」
・数字と固有名詞は紙に書く/曜日、時間、電話番号は口頭では残りません
・実物を見せる/指定袋、ゴミ置き場、換気扇のスイッチ
・「わかりましたか」と聞かない/多くの学生は「はい」と答えます。「ゴミは何曜日ですか」と質問して確認してください
・母国語の資料を併用する/口頭は日本語でも、手元に母国語の資料があると復習できます
5番目が重要です。「わかりましたか」への「はい」は、理解の証明になりません。具体的な質問で確認してください。
入居時の説明も含めてお引き受けできます
説明したこと自体を記録しておくと、後で役に立ちます。
| 残すもの | 使い道 |
|---|---|
| 説明した日付と担当者 | 苦情が来たとき、いつ何を伝えたかが分かります |
| 渡した資料の一覧 | 次の学生にも同じものを渡せます |
| 学生の署名または確認欄 | 説明を受けたことの確認になります |
| 使用言語 | 理解度の目安になります |
チェックリスト形式にしておくと、担当者が変わっても同じ説明ができます。入居のたびに内容がぶれると、学生によって知っていることが違うという状態になります。
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 事実を確認する(日時、内容、誰から) |
| 2 | 学生本人に確認する。頭ごなしに叱らない |
| 3 | 知らなかったのか、知っていて守らなかったのかを分ける |
| 4 | 知らなかった場合は、あらためて説明する |
| 5 | 管理会社に、対応した旨を伝える |
| 6 | 記録に残す |
3番の切り分けが大切です。知らなかったのであれば、それは説明の不足であって、学生の落ち度ではありません。次回以降の説明内容に反映してください。
また、管理会社への返答は必ず行ってください。苦情を放置すると、次の入居を断られる原因になります。「対応しました」という一報だけでも、関係が変わります。
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この記事のまとめ
近隣からの苦情の多くは「知らなかった」ことが原因です。入居前の説明でかなりの部分を防げます。
説明すべきは7項目ですが、時間がなければゴミの出し方と夜間の音の2つに絞ってください。それだけで苦情の大半は減ります。
資料は自作不要です。CLAIRの多言語生活情報は17項目を14言語で解説しており、在留外国人の94%以上をカバーするとされています。無料アプリもあります。
ただしゴミの分別だけは地域の資料を使ってください。名古屋市でも、収集時間が中区だけ朝7時までという違いがあります。
説明は入居当日が最も定着します。「わかりましたか」と聞かず、「ゴミは何曜日ですか」と質問して確認してください。
説明した記録を残し、チェックリスト化しておくと、担当者が変わっても同じ説明ができます。苦情が来たら、管理会社への返答を必ず行ってください。
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