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2026.08.10

学生寮が足りない日本語学校へ|民間アパートを寮代わりに使う実務ガイド

学生寮の空きが足りず、民間のアパートを寮の代わりに使いたい。日本語学校のご担当者から、よくいただくご相談です。

方法としては十分に成り立ちます。ただし契約の形を間違えると、法的なリスクを抱えることになります。学校名義で借りた部屋を学生に使わせる行為は、条件によっては「転貸」にあたり、オーナーの承諾がなければ契約を解除される可能性があります。

この記事では、民間物件を寮として活用するときの契約形態、実務の進め方、注意点を整理します。

この記事でわかること

  1. 3つの契約パターン
  2. 無断転貸のリスク|民法612条
  3. オーナーの承諾をどう得るか
  4. 一棟借りという選択肢
  5. 費用の考え方
  6. 寮則をどこまで適用できるか
  7. 実務の進め方
  8. よくあるご質問
013つの契約パターン

民間物件を寮として使う場合、契約の形は大きく3つに分かれます。それぞれ責任範囲がまったく違います。

契約者学校の責任
A. 学校が借り上げて学生に使わせる学校(法人契約)家賃の支払い、退去時の原状回復。転貸の承諾が必要になる場合があります
B. 学生本人が契約し、学校は紹介のみ学生本人原則として負いません。ただし審査に通るかは本人次第
C. 学生本人が契約し、学校が連帯保証や緊急連絡先になる学生本人保証の範囲で責任を負います

寮の代わりとして機能させたいのであれば、実質的にはAになります。学校が部屋を押さえ、入学者を割り当てる形です。ここに法的な論点があります。

02無断転貸のリスク|民法612条

民法612条1項は、賃借人は賃貸人の承諾を得なければ、賃借権を譲り渡し、または賃借物を転貸することができないと定めています。

そして同条2項は、これに違反して第三者に使用収益させたときは、賃貸人は契約を解除することができるとしています。

契約書に転貸禁止の条項がなくても同じです
不動産の専門機関の解説によれば、賃貸借契約書に無断譲渡・転貸を禁止する条項が個別に設けられていない場合でも、民法612条の規定により結論は変わらないとされています。
つまり「契約書に書いていないから大丈夫」という理解は誤りです。

ただし判例では、無断転貸にあたる場合でも、賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事由があるときは、解除は認められないと解されています(最高裁昭和28年9月25日判決)。個別の事情によって結論が変わり得るということです。

それでも、リスクを抱えたまま運用する理由はありません。次章のとおり、承諾を得ておけば済む話です。

03オーナーの承諾をどう得るか

難しく考える必要はありません。最初から用途を伝えて契約すればよいのです。

伝えることポイント
学校が契約者になること法人契約であることを明示します
入居するのは在籍する留学生であること誰が住むのかを明確にします
入居者が入れ替わる可能性があることここが重要です。卒業・進学に伴い、在籍期間中に交代することを伝えておきます
入居者名の届出方法入れ替わりのたびに書面で通知する、といった運用を決めておきます
緊急時の連絡体制学校の担当部署と連絡先を伝えます

入居者の入れ替わりを事前に承諾に含めておくことが、実務では最も大切です。個別に毎回承諾を取り直す運用にすると、入学期のたびに手続きが発生します。

オーナー側から見ると悪い話ではありません
学校が契約者であれば、家賃の支払いは法人が行います。入居者が変わっても契約は継続するため、空室のリスクが下がります。
「入居者が入れ替わる前提で、法人が家賃を払い続ける」という形は、オーナーにとって安定した契約になり得ます。この点を説明できるかどうかで、承諾の得やすさが変わります。
04一棟借りという選択肢

戸数がまとまる場合、アパートを一棟まるごと借りる方法があります。

一棟借り複数戸を個別に借りる
管理の手間物件が1か所に集約されるため軽い物件ごとにオーナーが違い、手間が増える
ルールの徹底入居者が全員自校の学生なので、生活ルールを統一しやすい近隣に一般の入居者がいるため、配慮が必要
近隣トラブル建物内で完結しやすい一般入居者との間で起きる可能性がある
空室リスク埋まらなくても全戸分の家賃が発生します必要な分だけ借りられる
交渉まとまった戸数のため、条件交渉の余地があります個別交渉になる

一棟借りは、入学者数が安定している学校に向いています。逆に、期によって人数の変動が大きい場合は、空室分の負担が読めません。

また、建物によっては入居者が全員留学生になることを近隣がどう受け止めるかという論点もあります。生活ルールの説明を丁寧に行い、苦情の窓口を明確にしておくことが前提になります。

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05費用の考え方

学校が借り上げる場合、次の費用が発生します。

初期費用/敷金、礼金、仲介手数料、保証料など。戸数分かかります
毎月の家賃/入居者の有無にかかわらず発生します
共益費・管理費
家具家電/寮として使うなら必要です
光熱費/契約名義を学校にするか学生にするかで扱いが変わります
退去時の原状回復費/入居者が入れ替わるたびに発生する可能性があります

学生から徴収する寮費をいくらに設定するかは、これらを踏まえて決めることになります。空室が出た場合の負担を誰が持つのかを、あらかじめ整理しておいてください。

また、光熱費を学校名義でまとめると、使用量の管理が課題になります。個別メーターがある物件を選ぶか、定額で徴収するかを検討してください。

06寮則をどこまで適用できるか

学校が借り上げた部屋であれば、学校としてのルールを設けることはできます。ただし、限度があります。

設けやすいルール慎重に扱うべきこと
友人の宿泊を禁止するプライバシーに関わる立ち入り
深夜の騒音を禁止する過度な行動制限
ゴミ出しのルールを守らせる正当な理由のない一方的な退去要求
禁煙とする
定期的な点検を行う(事前告知のうえ)

ルールは、入居前に書面で示し、本人が理解できる形で説明してください。日本語がまだ不十分な段階の学生も多いため、母国語やわかりやすい日本語での資料があると、後のトラブルが減ります。

07実務の進め方
順番やること
1必要戸数の見込みを立てる(寮の収容力との差から算出)
2エリアを決める(学校からの距離、通学手段)
3物件を探す。用途を最初に伝える
4オーナーの承諾を得る(入居者の入れ替わりを含めて)
5契約。転貸の可否と条件を書面で明確にする
6家具家電の手配、ライフラインの開通
7入居前に生活ルールを説明

3番で用途を伏せないでください。「法人契約で借りたい」とだけ伝えて、実際は学生を住まわせるという進め方は、後から問題になります。

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08よくあるご質問
Q. 学校名義で借りて学生を住まわせるのは、転貸にあたりますか?
A. 契約の形態や、学生から寮費を徴収するかどうかによって評価が変わり得ます。いずれにせよ、用途をオーナーに伝えて承諾を得ておくことが確実です。個別の判断については、弁護士等の専門家にご確認ください。
Q. 契約書に転貸禁止と書いていなければ問題ありませんか?
A. 民法612条により、契約書に条項がなくても賃貸人の承諾が必要とされています。書かれていないから自由、ということにはなりません。
Q. 入居者が変わるたびに手続きが必要ですか?
A. 契約時に、入居者の入れ替わりを前提とした条件を定めておけば、書面での通知のみで足りる形にできる場合があります。最初の契約でどう決めるかが重要です。
Q. 一棟借りと個別に借りるのは、どちらがよいですか?
A. 入学者数が安定していれば一棟借りが管理しやすく、変動が大きい場合は個別のほうが空室リスクを抑えられます。過去数期の実績をもとにご検討ください。
Q. 学生に寮費を請求してよいですか?
A. 学校の運営として設定すること自体は可能です。ただし転貸の評価に影響し得る要素でもありますので、契約形態とあわせてご検討ください。

この記事のまとめ

民間物件を寮として活用する方法は成り立ちますが、契約の形を誤ると法的なリスクを抱えます。

民法612条により、賃借人が賃貸人の承諾なく賃借物を転貸することはできず、違反すれば契約を解除され得ます。契約書に転貸禁止の条項がなくても同じです。

対策は単純で、最初から用途を伝えて承諾を得ることです。とくに入居者が入れ替わることを、あらかじめ承諾に含めておいてください。毎期の手続きが軽くなります。

オーナー側から見れば、法人が家賃を払い続け、入居者が変わっても契約が継続する形は、安定した契約になり得ます。この説明ができるかどうかで承諾の得やすさが変わります。

一棟借りは管理が楽でルールも統一しやすい一方、埋まらなくても全戸分の家賃が発生します。入学者数の安定度で判断してください。

個別の法的判断は、弁護士等の専門家にご確認ください。

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