地震を一度も経験したことがない人に、地震のときどうするかを伝える。これは想像以上に難しい仕事です。
母国に地震がない国から来た方にとって、「揺れたら机の下に入る」は自明のことではありません。緊急地震速報の音を聞いても、何の音か分からない。避難所という場所の存在も、そこへ行ってよいことも知らない。
この記事では、外国籍スタッフを受け入れる企業・登録支援機関のご担当者、そして外国籍の方を受け入れるオーナー様に向けて、入居時に何を伝えるべきかを整理します。無料で使える公的な多言語資料もご紹介しますので、そのまま実務にお使いください。
この記事でわかること
- なぜ「日本人には当たり前」が通じないのか
- 入居時に必ず伝える5つのこと
- 無料で使える多言語の防災資料
- 物件を選ぶ段階で確認しておくこと
- 備えておくもの
- 本人に渡す説明文(やさしい日本語)
- よくあるご質問
日本で育った人は、学校で避難訓練を繰り返し受けています。緊急地震速報の音を聞けば反射的に身構えますし、避難所が学校であることも知っています。これらはすべて、日本で暮らす中で身についた知識です。
ところが、地震のほとんどない国から来た方は、この土台を持っていません。実際に起こりがちなのは、次のような状況です。
・揺れたときに外へ飛び出してしまう(落下物の危険がある)
・避難所がどこにあるか知らない。そもそも避難所という仕組みを知らない
・「避難してください」と言われても、外国籍でも行っていいのか分からず躊躇する
・断水や停電が起きたとき、どこに情報があるか分からない
・自治体の防災無線が聞こえても、内容が理解できない
とくに「外国籍でも避難所に入っていいのか分からない」という不安は、当事者から実際に聞かれる声です。伝えていなければ知りようがありません。
名古屋を含む東海地方は、南海トラフ地震の想定区域に含まれています。伝えるべきことを伝えていない状態は、企業にとってもオーナー様にとってもリスクです。
あれもこれもと詰め込むと、かえって伝わりません。優先順位をつけると次の5つになります。
| 伝えること | ポイント | |
|---|---|---|
| 1 | 揺れたら、まず身を守る | 机の下に入る、頭を守る。外へ飛び出さないことを強調する |
| 2 | 緊急地震速報の音を聞かせる | 説明より、実際に音を聞いてもらうほうが早い。スマートフォンの設定も確認する |
| 3 | 避難場所の位置を地図で示す | 言葉より地図。実際に一度歩いてもらうのが最も確実 |
| 4 | 避難所は誰でも利用できること | 国籍や在留資格を問わないことを明確に伝える |
| 5 | 連絡先を紙で渡す | 会社の担当者、管理会社、110番・119番。スマートフォンが使えない場合に備えて紙で |
3番については、入居時のオリエンテーションで一緒に歩くのが理想です。時間が取れない場合でも、地図に印をつけて渡してください。災害が起きてから地図を見る余裕はありません。
海外から持ち込んだ端末や、設定によっては緊急速報が届かないことがあります。入居時に、緊急地震速報の通知がオンになっているかを一緒に確認しておくと安心です。
あわせて、観光庁が監修する災害情報アプリ「Safety tips」を入れておくことをおすすめします。多言語に対応しており、プッシュ型で緊急速報や気象情報が届きます。
ゼロから資料を作る必要はありません。公的機関が無料で公開しているものがあります。
| 資料 | 内容 | 提供元 |
|---|---|---|
| 外国人のための減災のポイント | 災害への備えをまとめたポスター。スマートフォンの言語設定に応じて15言語で表示されるQRコード付き。ダウンロードして貼っておける | 内閣府 |
| 多言語辞書 | 緊急地震速報、津波警報、避難指示などに使う地名・用語・伝達文を約7,000語収録。15言語 | 気象庁・消防庁 |
| 災害時の多言語情報作成ツール | 実際に配信された災害支援情報をもとにした文例集。やさしい日本語版はルビの位置を2種類から選べる | 自治体国際化協会(CLAIR) |
| NICやさしい日本語防災マニュアル | 名古屋国際センターが作成。備えと災害時の行動をやさしい日本語で解説。2023年1月に改訂版が完成 | 名古屋国際センター |
| Safety tips | 多言語対応の災害情報アプリ。多言語辞書が反映されている | 観光庁監修 |
15言語には、日本語・英語・中国語(繁体字/簡体字)・韓国語・スペイン語・ポルトガル語・ベトナム語・タイ語・インドネシア語・タガログ語・ネパール語・クメール語・ビルマ語・モンゴル語が含まれます。
名古屋市内であれば、名古屋国際センターの資料が最も実用的です。地域の実情に沿って作られており、やさしい日本語版なので日本語学習中の方にも読めます。
外国籍スタッフの住まい手配と入居後のサポートをご相談いただけます
防災は入居後の話だと思われがちですが、物件選びの段階で決まる部分があります。
| 確認項目 | なぜ重要か |
|---|---|
| 建物の建築時期 | 1981年6月以降に建築確認を受けた建物は、新耐震基準が適用されている |
| ハザードマップ上の位置 | 浸水想定区域かどうか。自治体のハザードマップで確認できる |
| 最寄りの避難場所までの距離と経路 | 説明するときに必要。実際に歩ける距離か |
| 建物の階数と部屋の位置 | 浸水想定区域では、上階のほうが安全な場合がある |
| 家具を固定できるか | 賃貸では壁に穴を開けられないことが多い。突っ張り棒式で対応できるか |
とくにハザードマップの確認は、外国籍の方が自分で行うのは難しい作業です。手配する側が事前に見ておき、必要な情報を伝える形にしてください。
当社では物件をご提案する際、こうした点も含めて確認しています。社宅として複数室を押さえる場合は、まとめてご相談ください。
社宅として用意する場合、次のものを各部屋に置いておくと、いざというときに機能します。
・懐中電灯/停電時に必要。スマートフォンのライトはバッテリーを消耗する
・モバイルバッテリー/情報を得る手段を確保するため
・常備薬/本人が使っているもの
・連絡先を書いた紙/充電が切れても見られる形で
・家具の固定具/突っ張り棒式など、壁を傷つけない方式
食料については、宗教上の理由で食べられないものがある方もいます。ハラール対応やベジタリアン対応の非常食も市販されていますので、必要に応じてご検討ください。
そのままコピーして、入居される方にお渡しいただけます。
1. 大きい 音が 鳴ったら
スマホから 大きい 音が 鳴ります。これは「もうすぐ 地震が 来ます」の 合図です。
2. すぐに 頭を 守って ください
机の 下に 入って ください。机が ない ときは、かばんや クッションで 頭を 守って ください。
外へ 走らないで ください。上から 物が 落ちて きて、危ないです。
3. 揺れが 止まったら
火(ひ)を 消して ください。ドアを 開けて ください。靴(くつ)を はいて ください。ガラスが 割れて いる ことが あります。
4. 逃げる ところ
近くの 学校や 公園に 行きます。ここです →(地図に 印を つけて 渡して ください)
外国人も 入れます。心配 しないで ください。
5. 電話
けが・火事(かじ)… 119 / 事件・事故 … 110
会社の 人 …(電話番号を 書いて ください)
管理会社 …(電話番号を 書いて ください)
※この 紙は 家の 見える ところに 貼って ください。
受け入れ企業・登録支援機関・オーナー様へ
外国籍スタッフの住まい手配を全国で承っています。物件の選定から入居後の生活サポートまで。スペイン語・ポルトガル語対応。入居時の説明でお困りの場合もご相談ください。本店=名古屋市西区/岐阜支店あり。
この記事のまとめ
地震のない国から来た方にとって、緊急地震速報の音も、避難所の仕組みも、既知の情報ではありません。伝えていなければ知りようがない、という前提から始めてください。
入居時に伝えるべきは、揺れたら身を守ること(外へ飛び出さない)、緊急地震速報の音、避難場所の位置、避難所は誰でも利用できること、連絡先を紙で渡すこと、の5つです。
資料はゼロから作る必要はありません。内閣府の多言語ポスター、気象庁・消防庁の多言語辞書(15言語)、CLAIRの文例集、名古屋国際センターのやさしい日本語防災マニュアルが利用できます。
物件選びの段階では、建築時期、ハザードマップ上の位置、避難場所までの経路、家具を固定できるかを確認してください。ハザードマップの確認は、手配する側が行うべき作業です。
名古屋を含む東海地方は南海トラフ地震の想定区域です。備えは入居時から始まります。
入居後の安心まで含めた住まい手配を
外国籍スタッフの社宅手配を全国で承っています。物件選定から採寸、中古家電の手配・設置、ライフライン取次、入居後のサポートまで一括対応。スペイン語・ポルトガル語対応。
0120-337-900不動産のイブキ(伊吹株式会社)/名古屋市西区庄内通3丁目9-4/国土交通大臣(1)第10691号





